恋人が死んだ夜、世間では「セカチュー」が流行っていた。
そう、セカチューだ。
今日の話には「セカチュー」が大きく絡んでくる。
ピカチュウではない、「セカチュー」だ。
「世界の中心で愛を叫ぶ」だ。
そう、大体中学二年生くらいの頃だろうか。僕の周りは・・・というより社会的に「ケータイ小説」が流行っていた。ディープなラブなやつとか、まぁ色々だ。もう、至る所で「難病」とか「不治の病」的なやつに侵された「愛しの人」と「うわああああああああああ」みたいになるアレだ。
当時の僕は、ある種では奇病に侵されていた。
そう「厨二病」である。その病魔は、どちらかと言うと「ウッ、右手が!」みたいなやつのベクトルではなく「ヤンキー方向」へと僕を蝕んでいて、もう身も心も「ヤンキー」を気取っていた。今思い返してみれば、嘘みたいな話しである。
だって、お前(自分)!!
ボンボンが通うような進学校の生徒やんけ!!と。
ヤンキー夜露死苦という伝説。
まぁ、そのせいで妄想は留まることを知らず、ついに当時ケータイ(ガラケー)で無駄に月額100円~を払う「クソ」のようなサイトに登録までした。
「ヤンキー夜露死苦」である。
サイト名はなんと
「テリー伊藤」が監修したとかなんとか。
コンテンツは
謎の掲示板と待ち受け画面がダウンロードできる。
あとは特攻服とかバイクのカスタムパーツ(マジ卍なやつ)が売ってるようなサイトだった。もうよくわからない。
検索したら「跡地」みたいなのが出てきた。うん多分コレだ。
まぁよい。僕はそこで架空のチームの架空の頭(ヘッド)の気分になっていた。都合よく、僕の住んでいる町の人間はこんなサイトに登録していなかったみたいだ。
ハンドルネームは・・・ああ。
【狂イシ獅子ノ童ハ蠍】みたいなやつだったと思う。
うわ!ガチ厨二やんけ!!!と思う方も多いだろうが当時はマジでこういうテのハンドルネームを今で言う「DQN」も愛用していたので、そんなに浮いた感じにはなってなかった。「‡〇〇‡覇王」とかもザラにいた。
もうこの時点で「ああ!身体が痒い!!」となってくる人もいると思う。
ぶっちゃけ。僕はわりとこの話しはリアルでもネタとして、しかも喜々として話す。
聞かされる相手も
「よくもこんな恥ずかしくて死にそうなことを淡々と話せるね」
というレベルでは困惑しながら聞いてくれる。
そもそも、僕としては「若さゆえの過ち」と開き直っているので全くと言っていいほどノーダメージだから問題ないのだマジ卍。
話を戻そう。
僕はそこの掲示板でちゃっかりと立ち位置を築いて、よくわかんないままに「重鎮」ポジションについてしまった。多分にヤンキーが好きそうな「ポエム」を投稿していたからだと思うし、話し方もだいぶ変えていた自覚はある。
文末はこう、アレだ。
卍卍 愛した女はぜってぇ守る 卍卍
みたいなノリのポエムだ。後は、「夜露死苦」然りに当て字で二重意味にしたりして、ちょっと深みを持たせていた。(実際中身なんてないんだけどね)
よくわからないが、無駄に評価されて「個(人)スレ」まで立っていた。荒れてるスレッドを鎮圧してくださいとか色んなことを頼まれたりもした。もはや、本当によくわからないのだけれど、僕はそのネットヤンキー界ではTOP7くらいの位置に3ヶ月くらいで上り詰めたのだ。マジ出世街道、ネットヤンキー街道を爆走ドゥルルルである。
(そもそもみんなネットヤンキーだったんじゃね?)
という疑問もあるが、ちゃっかりサイト外の交流(@~をごまかしてメルアド交換)とかやってたもんだから、何人かの人(これもランク上位者)とはメル友になっていた。
ヤンキーA「〇〇(僕の住んでるとこ)まで今度バイク走らせっけど、会える?」
ヤンキーB「〇〇(僕のハンネ)ちゃん、今度色紙に詩書いて送ってくんね?パイセンにプレゼントすっからさー」
とか、わりとザラにあるパターンだった。
マジ卍である。
みんな白◯病になり始めた。
まぁぶっちゃけここまでは前置きである。
いつもどおりの前置きの長さはテンプレなので許して欲しい。
さて、そう。夏頃だろうか、ある女の子が僕の個スレにからんできた。もうハンネなんて覚えてすらいない。とにかく、めっちゃ慕ってくるタイプの子で「犬」みたいなやつだった。
まぁもう、その頃と言えば
「世界の中心で愛を叫ぶ」とか「ディープラブ」がフィーバーしていた。
掲示板も「汚された・・・」とかもうなんかアレなスレッドが蔓延していたし、僕の個スレにも「先輩に無理矢理ヤラれた」とかそんなやつとか「アタシ、身体売ってるけどこんままでいいのかな」とかそんなんが蔓延していた。マジ卍。
もちろん、それはテキトーに捌いていたし、その頃にはTOP7のうち3人くらいがサイトを引退していた。
ちなみに引退の際は「引退式」といって日付変更まで100レス(1スレッド上限)をみんなで埋めていく→また新しいスレッドを(ryという感じで、いかにスレッドが続くかみたいなのが「勲章」だった。
(たまに出戻りしてくる方もいたし、「おお~もうワシのこと知らないやつもおるんやな」みたいなことをいうパイセンもいらっしゃった。)
まぁ、いい。そんな風習はどうでもいいのだ。
とりあえずだいぶ長くなってきたから、端的に言うと。
その女の子が、急に病気(自称)になった。
今でも変わらないがテキトーなことばっかり言うので
「俺だけは忘れずに待っててやっから、はやく治せよ」
みたいなことを多分、言っていた。
まー!!!!! そしたら!!!
TOPレベルの僕が言ったから、周りも動く!!動く!!!!
いつの間にか「〇〇ちゃんに千羽鶴ならぬ1,000個コメントを送る」みたいなキャンペーンみたいになってきていた。もう「祭り」である。
もう、ストーリー的には「世界の中心で、愛をさけぶ」だ。
その子は入院(自称)したし、髪の毛も抜けた(自称)し、
挙句には
死んだ(自称)。
最終的にはその子のアカウントで「母親」を名乗る人(自称)がコメントをしてこの祭りは終わった。もちろん、この祭りの「矢面」に立ってたものだから熱愛的な、彼氏的な感じに扱われて僕まで、こう「悲劇のヒロイン」になってしまった。
もう、もはや「意味がわからない」。
しかし、実際に起きたことなのだ。
とりあえず設定は大事なので僕は「1リットル」くらいの「涙」を流していたような雰囲気を醸し出していた。マジ卍。
まぁここでも「周りの空気」を読んで僕は追悼スレみたいなのを立てた。これも結構、伸びていたし、母親(自称)も「天国で〇〇も喜んでると思います」みたいな感じになった。「釣り宣言マダー?」とかいうようなやつは存在しないような、微笑ましいネット感である。ヌクモリティがマジ卍だ。
そんなことをしているうちに、また1人、また1人と「白◯病」みたいな難病になっていく。どっからどこまでガチなのかもわからない。知識と下準備の足りてないアホに至っては、「死に至る性病」のせいで余命僅かとかいい出した。アレ?君さ、彼氏(大学生)の友達に無理矢理ヤラれて、そっからウリを初めて・・・って設定がそもそも3ヶ月前だったよね?あれ?みたいな。
もう、セカチューブームのせいで掲示板が「隔離病棟」と化した。
もうカオスである。
ネット恋愛の相手は群馬だった。
流石にこうなると、僕も「疲れた」。
「空気を読む」ことに関しては、今以上に・・・いや人生で一番長けていたといっても過言ではないレベルの僕だったが「疲れる」のだ。
なんやかんやあって「引退」を僕も考えることになるわけだ。
というか、この件でTOP7(かれこれもう残り3人くらいになってたが)とも語ったが、おおむね皆ウンザリしてしまって一斉にやめることにした。
ちょうどパケット定額が各キャリアはじめたくらいの時期で、それも起因してかアホが流入してきていたこともあるのだろう。
というかヤンキーじゃないやつが「ヤンキーを気取る」パターンもだいぶ、増えてきていたのだ。それに見かねた部分もあるようだった。
ま!!!
そもそも!僕自身も!
ヤンキーじゃないんだけどね!!
ともあれ、僕も引退式・・・をするのは面倒だったので個スレで◯月◯日に辞めます。メールしたい人はアドレス置いておきますので写メとハンネ付きでメールください~と、シンプルに数名の全国にいる「ヤンキー?」のアドレスを手に入れて、すんなりと勇退した。で、まぁそこで1人だけ凄く「ウマ」があった子がいて、半ば「ネット恋愛」みたいな関係になるのだけれども。
まぁこの話しは気が向いた時にしようと思う。
マジ卍をみるたびに、僕は「ヤンキー夜露死苦」を思い出す。
それだけのことだ。