キットカットが僕と彼女の関係をシャットアウトしかけた話。
思い出したから書くし、どうせそのうち思い出せなくなるから書こう。
まぁこれも記憶が曖昧だから「フィクション」ということでOKだ。
高校3年生の春先のことだった。
当時、僕には彼女的なものがいた。
いや彼女だわ。うん。
ここは言い切っておこう。
その子は別な学校に通っていたから、放課後の2時間そこいらだけが「青春のひと時」を送る、特別な時間だった。
決まって僕らが過ごすのは、
お互いの都合(門限とか)もあって、とある某大型商業施設だった。
ざっくり書くと
彼女の学校=彼女の自宅=待ち合わせ場所=僕の学校=僕の自宅
こんな感じだ。
お互い学生身分ゆえに、お金がない。
基本的にはテーブルに座って安い飲み物に安いジャンクフードをつまみながら喋る。とりとめのない話ばかりではあったものの、若さゆえだろう。まぁかけがえのない時間だった。多分ではあるが、学生カップルというものは、こう基本的に座って喋れさえすれば満足なのだ。距離感やコミュニケーションをとる時間こそが重要なのだ。今のようにフェイスタイムとかLINEとかない時代だからメール全盛期だ。「会う」ということの「距離感」の違いはきっと今より大きかったはずだ。
まぁそんなもんだから「9」のつく日はクレープの日!!とかそういうのを楽しんでいたし、たまによくわからないノリでクレーンゲームにお金を突っ込んでみたり、お互いに200円ずつ出し合ってプリクラを撮ってみたり。
まぁ、本当に金がないなりに時間がないなりに色々楽しんで居たと思う。
まぁ、そんな穏やかでクソゆるいひと時。
とはいえども学生=カネがないのは共通のことでクラスメートにばったり出くわしたりするのも日常茶飯事だった。学生というのはよく出来たもので、互いにカップル同士で出喰わさないように、それぞれ自前のテリトリーを構成する。なんとも素敵な気遣いの文化だ。まぁそれでもバッタリ出喰わすときもある。
知り合いでなかった場合、すぐにお互いの「戦闘力」を図る。仮に向こうがクソほどのDQNだった場合は華麗にスルーだ。逆にクソほど地味な「オタク」臭のあるカップルだった場合は、勝手に向こうが捌けていく。弱肉強食なのである。
顔見知りだったときはこう「お!」みたいな感じで手をあげて、微妙にお互いの距離感をとりつつに華麗に流し合うのだ。隠れることは「ダサい」のだ。10代というものは学校での立場が絶対価値である。
まぁ学生カップルにおいては他に危惧するケースがある。
そういうのは決まって、ソロの女の子だったり、女子軍団だったりする。というより、「異性」が面倒くさいのだ。これがまぁーめちゃくちゃ気まずい。ぶっちゃけた話、補導の先生にバッタリ出食わす時よりも面倒くさい。
これキッカケで何人ものカップルが翌日の学校で「ねーねー!聞いたよ~」みたいな面倒くさい絡みをされたことか、想像は容易である。
(とは言え、男は「女子」が彼氏を連れていた場合、さほど騒がないからOKだ)
しかし、このケース。逆に、連れがいない状況。つまりは、彼女との待ち合わせまでのタイミング(空白時間)とかなら「テキトー」に流したり、あわよくばそれまでの時間つぶしになる。「彼女待ってんだわ」とかでも言っておけば、地味に価値向上への一手にもなるし、「女子」もそう暇ではない。どうせ、10分そこいらで撤収してくれる。万が一に「向こうも彼氏待ち」みたいなシチュエーションであれば、これはもう万々歳だ。向こうも勝手にソワソワするから退散してくれる。だって、向こうにも彼氏のネットワークがあるし、立場がある。変な浮名が立つのは避けたいのだ。そして、基本的に学生にとって「時間」とは有限であり、「価値」あるものだ。
そう、よほどなことがない限り、「彼女を待ってる」と言って、「長々と居座り続ける」ようなヤツ(暇人)はいないのだ。
おおよそ察しはついてきたであろう。
その日、僕は待合せの最中、そんな「暇人」に居座られたのだ。わりと「仲が良かった」という理由もあるだろうが、それ以上にその「暇人」の性質にも要因があった。いい具合に「おせっかい焼き」だったのだ。
「・・・お前、いつまでおるんや。」
「えー良くない? あんたの彼女見てみたいし」
「いや・・・プリ見せたやんけこの前」
「ナマがみたい」
「頼むから・・・帰ってくれw」
こんなやりとりをはじめた。
「こないねー」とか言いながら、その子はカバンからキットカットを出して食べ始める。いやいや、もうあと5分となく、ここに来るぞ!!?と。
「あ、食べる?」と手渡してくる。
いやいやちょっと待て。なんで半分で折ったやつじゃなくて丸かぶりしたやつの残りなんだよと。おかしいだろと。とは言え女子の食いかけを食えないというのもなんか「ダサい」わけで・・・・って!!
あああああ!!! ってもう近くまで来てんじゃん!!
「その子だれ?」
あああああああああああああ!!!!!!
「ア、ホラ、前言ってたじゃん?友達の〇〇や」
「よろしくー^^!」
よろしくじゃねえ! さっさと失せろ!!!
「へぇ・・・ああ、よろしくです。〇〇って言います」
「私は〇〇で(僕)とは~からの付き合いで~」
ちがうだろおおおおおおお!!!
お前は!!!! さっさと!!!
この場から失せろ!!!!!!
という僕の無言の圧力が通じたのか。
はたまた偶然か。お互いの自己紹介が終わったあたりで、そいつ(暇人)は荷物をまとめ、そそくさと退散していった。
そう、
食いかけのキットカットを残したままである。
(捨てるべきか否か・・・)
動転していたのだろう、僕も。
「あ、これ食う?食いかけだけど。」
とあろうことか彼女に進めたのだ。
彼女:「いや、要らない」
ぼく:「じゃ、食うわ」
口の中に甘ったるいチョコレートが溶けていく・・・はずなのだが、どこか気まずい空気の中で食べたキットカットはもはや味がしなかった。
彼女「・・・帰る。」
ぼく「え???」
・・・
どうやら一部始終が見えていたらしい。
そりゃそうだ、自分の知らない女(彼氏の友達だとしても)の「食いかけ」を手渡そうとしたのもアレだし、それを甘んじて僕が食ったことも理解しかねる感じだったようだ。
「ありえないでしょ」と。
その後のことは少し曖昧だ、おそらくデートは続けはしたものの、空気は最悪のまま。そして、ひたすらに帰ってから詫まくったことは言うまでもない。
一応、その子とはその後も関係が続いた・・・からまぁ事なきを得た?のだが、その一見以来、その子は「キットカットが嫌いになった」らしい。そして「スニッカーズ派」になったようだ。なんと罪深いことだろうか。
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教訓
・ダサいか、ダサくないかで行動すると大変なことになる。