【退職】見送られる予定が見送ることになったハナシ。【先輩】
書き出しはない。
ひたすらに殴り書いていく。
そう、今日5月31日は私の先輩であり同僚であり、上司でもあった「彼」の最終出勤日であった。当初は僕が3月31日に退職し、彼に見送られる予定(その後、5月に退職)だったのだが諸事情により僕が残る運びとなった。
理由については割愛する。そんなことより書くべきことがあるからだ。
始まりは雨、終わりも雨
その「彼」は私より3ヶ月早く入社した。私より年は上でスラリとした好青年。めちゃくちゃ几帳面でお調子者の、どこか憎めないタイプの人間だろう。
そんな「彼」は空前絶後のアメオトコだった。
雨に愛され、嵐を愛する男だった。本市はイベントが多い、それゆえ外仕事も多く、彼と仕事をするときはよく雨に悩まされていた。
少し、思い出話をしよう。
私が着任して間もないころ、彼は「海に行こう」と行った。
なんということはなく、ただの付き添いで特に僕を誘う必要性はなかったのだが、せっかくだからという理由だった。
海につき、「ここはこういうところだ」と諸々の説明を済ませると、次第に雲行きが怪しくなってきた。そして、彼が「せっかくカメラあるんだし、俺を撮ってくれ」と言い、良いアングルになりそうな堤防まで行った矢先のことだった。
突然のスコールが降った。
カメラも身体もびしょ濡れになった。
その時は「海は天気が変わりやすい、うんきっとそうだ」くらいにしか思っていなかったのだが、時が経つに連れ、次第に次第にそういう「雨」のエピソードが増えてきた。
イベントに行った矢先に「雨」、営業に出るかと話した瞬間に「雨」。
「今日は俺はやる気に満ち溢れている」と言うと激しい雷雨。
彼が休みのときにでさえ、電話がかかってきた瞬間に「雨」ということもあった。
次第に彼は「雨男」として知られることになった。
そして今日、最終日。
やる気を出していたのであろう、朝から空は黒かった。
彼の今日の業務は9割が「挨拶周り」だった。もちろん、土砂降りではなかったにせよ、やはり雨が降った。そして彼が挨拶周りを終える頃、空は綺麗に晴れていた。
やはり、噂は浸透しているようで行く先々でも「やっぱり雨だ!」と言われたらしい。もはや、神がかり的な何かを持っているのだろう。
という訳で、僕にとって「最初から最後」まで彼のイメージには「雨」が付き纏って来るのだ。
いつの間にか「呼び名」が変わっていたハナシ。
会社に入ると通常は「◯◯さん」とか「◯◯+役職」が一般的な呼び名だ。
しかし、彼と私は「バディ(彼がそう評していた)」として組んでいたこともあり「お前」と呼ばれることが一般的だった。そんな中でもたまに呼ぶときには「◯◯くん」と呼ばれていた。もちろんに外に行くときなんかには社会マナー通り「ウチの◯◯が~」というパターンもあった。1年くらい、いや2年目くらいだったろうか「◯◯氏」になっていた。まぁ別に良いのだけれども。
そして、この間(ここ3ヶ月くらい前)から、下の名前で呼ばれるようになっていた。
よくわからないが、そういうことだ。挙句には「△△(名前)氏」と呼ばれていた。
心境の変化でもあったのだろう、まぁそんな感じだった。
もちろんここにホモ的な展開はないのでそこは念押しをしておこう。
パイセンを尊敬したハナシ。
そんな彼ではあるが、パソコンがあまり得意ではなかった。もちろん最低限のことは出来たが、「触れていない」ようなものに対してはトコトン駄目だった。
Facebookが出始めの頃はもちろんよく分かっていなかったし、何よりエクセルがうまく使えていなかった。もちろんあまり私も得意ではないが、それ以上に彼はエクセルというものを不得手としていた。表なんかもワードで作っていた。
もちろん数式も組み込まれていないから計算は手打ちで行っていた。
別に彼のネガキャンをするわけではない。書きたいことはそこではないのだ。
彼の「成長性」を私は尊敬している。何事にも貪欲で、一生懸命なのが「彼」だ。
エクセルに関しては無料講習会で私以上にスキルを身に着けてきたし、Facebookなんかも日々使っていることでスキルはめちゃくちゃ上がった。また、私一人で動かしていたHTML関係が必要な職場のHP運営も、その柔軟で貪欲な姿勢であっさりと身に着けた。あまり言えないことでもあるが某フリーソフト関係(burnするやつ)も、そんじょ2日くらい説明した後にはバリバリ出来るようになっていた。
そこのあたりは私にはない姿勢なので尊敬の念を抱いている。
それと、彼の立ち振る舞いは見ていてとても勉強になった。
あまりここで多くは語らないが、特に女性関係は勉強になった。
スッキリしている部分と釈然としない何か。
文面からも伝わってくるものがあると思うが、私は彼に懐いていた。
もちろん彼は聖人君子でもないからトラブルも多々あったし、火種どころか大火事の状態でダンプカーが突っ込んでくるような大惨事もあった。
よく怒られたし、よく語らった。よく遊んだし、よく仕事をした。
僕のまだまだ短い社会人生活の中で、一番長く仕事をしたのが「彼」だった。
まだまだ盗めていない部分も多いし、まだまだ勉強すべきことも大いに残っている。でも結果として今日を以て、彼はここを去る。
もう一ヶ月もすれば私は最年少ながらに最古参という意味の分からない立場になるのだけれど、もう少し、もう少しだけ色々と盗んでおくべきだったなと思う。
思えば、私も彼も入社時期の都合上、ほとんどの「ここ」での仕事、モヤモヤ、トラブル、イベント、それら全てを共有してきたようなものだ。
「ここ」での半身を失った、と言っても過言ではないかもしれない。
大いに語らい、大いに衝突した。
そして男同士の仲だからこそ、スッキリとしたキモチで送り出せた。
そのはずだ。そのはずにちがいない。そうなんだろうけども。
どこかで釈然としない思いがある。
表現することの出来ない「何か」がある。決して寂しさとかの感傷的な部分ではない。
もしかしたら、これは「不安」なのかもしれないし、先に言ったような「もう少し学ぶべきだった」という「後悔」なのかもしれない。そこんところはいずれ、落ち着いて来る頃に分かってくるのだろう。
ただ、この感覚を忘れたくないから今日、ここに残しておく。
最後に。
私は「彼」から漫画を借りていた。丸2年近く借りていた。
最早、借りパクを疑われてもしょうがないほどの長い期間、私が彼から借りていた漫画はヤンキー漫画の金字塔とも言える「ワースト」だった。
返す前だしと思って一気読みしようと思ったら12巻までしかなかった。ビビった。
(ちくしょう!全巻セットじゃなかったのか!)
で、今日、普段はない「終礼」で彼は最後の別れの言葉を言った訳だが、
肝心の私は伝えず終いだったので。
ここに書く。そして普通に書くにはあれなので二枚の画像で済ませる。
多分に「彼」しか伝わらないだろうがそれでいい。
送る言葉というよりは私の決意表明みたいなものだ。
「頼んだよ」と任された、私の決意表明だ。
花には嵐の例えもある、そこにはやはり「雨」がある。
だから、「さよなら」だけが人生なのだ。
という訳で、明日からもうちょっとだけ、本気出す。